アメリカ証券取引委員会(SEC)は、イーロン・マスク氏が法廷での証言を拒否したことを受け、制裁を求める方針を示しました。マスク氏は、2022年のTwitter買収に関する調査で証言を命じられていましたが、予定されていた証言日に直前でキャンセルしました。SECはこれを重大な問題として取り上げ、制裁を求める動議を裁判所に提出する予定です。
SECとイーロン・マスク氏の対立:証言拒否の背景とは?
2024年9月20日、SECはマスク氏が法廷命令に従わなかったとして、民事制裁を求める動議を準備していることを発表しました。これは、Twitterの44億ドルの買収に関連するSECの調査の一環として、2024年9月10日にサンフランシスコで予定されていた証言を、マスク氏が直前に欠席したことが理由です。SECによれば、証言のわずか3時間前にマスク氏が出席しないと通知してきたため、調査の進展が遅れる結果となりました。
マスク氏は、欠席の理由として、フロリダ州ケープカナベラルでのSpaceXのポラリス・ドーンミッションの打ち上げを監督する必要があったと説明しています。同氏の弁護士アレックス・スピロ氏は、マスク氏の不在が宇宙飛行士の安全に影響を及ぼす可能性があったと主張しました。しかし、SECはこの言い訳を「戦術的な遅延」に過ぎないと指摘し、SpaceXの技術責任者であるマスク氏は、打ち上げ計画について2日前にすでに知っていたはずだと述べています。
法的影響:マスク氏に対する制裁の可能性
SECは、マスク氏が証言を拒否したことを重大視しており、裁判所に対して制裁を求める動議を提出する予定です。SECの弁護士ロビン・アンドリュース氏は、マスク氏の行動を「ゲームのようなもの」と非難し、裁判所がマスク氏のこのような戦術に対して厳しく対処するべきだと述べています。
マスク氏側は、この証言の再スケジュールが10月3日に設定されているため、制裁は不要であると反論しています。また、スピロ弁護士は、今回の欠席は「緊急事態」によるものであり、今後このような事態が再発する可能性は低いと説明しています。
Twitter株購入に関連するSECの調査とは?
SECは、マスク氏がTwitterの株式を大量に取得した際に証券取引法に違反したかどうかを調査しています。2022年、マスク氏はTwitterの株式を9.2%まで取得しましたが、その事実をすぐに開示せず、少なくとも10日間にわたり隠していたとされています。通常、投資家は公開企業の株式を5%以上取得した場合、その事実を開示する義務がありますが、マスク氏はこれを怠った可能性があります。
この開示の遅れが、他の投資家に不利な影響を与えたとして、Twitter株の株主からも批判が集まりました。マスク氏は後に、「SECの開示要件を誤解していた」と述べ、この遅れは単なる「ミス」であると説明しています。しかし、SECは引き続きこの件を調査しており、マスク氏が違法行為に関与したかどうかを追及しています。
SECとの長年にわたる対立:過去の訴訟と今回の問題
マスク氏とSECの対立は今回に限ったことではありません。2018年には、マスク氏がTwitter上で「テスラを非公開化する可能性がある」と投稿し、その発言が市場に大きな影響を与えたとして、SECが訴訟を起こしました。最終的に和解が成立しましたが、この件以降、マスク氏とSECの関係は緊張状態が続いています。
今回のTwitter買収に関する調査においても、マスク氏はSECが「嫌がらせ」をしていると主張しており、同氏が提出した文書の中で、SECの召喚状に対しても強く反発しています。
SECの調査と今後の展開:マスク氏の法的リスク
SECは、マスク氏がTwitter株購入に関連して証券法に違反している可能性があると考えており、引き続き調査を進めています。特に、マスク氏が5%の株式を取得した時点でその事実を適切に開示しなかった点や、その後の株式取得に関する情報の開示が遅れた点が問題視されています。
今回の制裁動議が裁判所で認められた場合、マスク氏に対して罰金やその他の法的制裁が科される可能性があります。また、証言を再度拒否するようなことがあれば、さらなる法的トラブルに発展する可能性もあるため、マスク氏の今後の行動には注目が集まっています。
マスク氏のTwitter買収とその影響
マスク氏がTwitterの株式を取得し、最終的に同社を買収したことは、世界中で大きな話題となりました。この44億ドルの買収は、テクノロジー業界のみならず、金融市場全体に大きな影響を与えました。しかし、この買収の過程での株式取得や情報開示の遅れが、SECの調査対象となっています。
マスク氏は、この買収によってTwitterを「表現の自由の場」として再構築することを目指しているとしていますが、その背後での法的問題が、今後のビジネス展開にどのような影響を与えるのかが注目されています。
まとめ:SECとマスク氏の対立の行方
今回のSECによる制裁の申し立ては、イーロン・マスク氏にとって新たな法的リスクをもたらすものです。特に、マスク氏がTwitter買収に関連する証券法違反の疑いで調査を受けている中での証言拒否は、同氏のビジネスや評判に大きな影響を与える可能性があります。
今後の裁判所の判断や、マスク氏がどのようにこの問題に対応するかによって、彼のビジネスに対する信頼性が試されることとなるでしょう。また、SECとの対立がどのような形で解決されるのか、引き続き注視が必要です。
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